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December 25, 2011
「3.11以降に現出した音風景 remix」
サウンドスケープ soundscape という言葉、考え方がございます。本来は20世紀現代音楽と環境音の関係を表したのですが(※)、昨今では「風景には音が欠かせない」と、より広い意味を持ってまいりました。その広範化した意味を、更にわたくしは掘り下げ、街を行き交う音はその時代の風俗文化を表していると考えております。
さて、みなさんにも想像していただきたいのです。
わたしたちの身の回りに溢れる音が如何なるものであるのかを。
電器製品から発せられるICチップに組み込まれた音、隣でけたたましく鳴り始める携帯機器の音。一向に前へ進まぬ車列のエンジン、商店街で防犯を呼び掛ける無機質な声のアナウンス、店舗にはそれぞれのBGMがあって、ぎゅう詰めの電車の発車合図まで音楽になっています。
かつての街、例えばわたくしが幼少期を過ごした昭和40年代前半の渋谷でさえも、金魚売りの声や、溢れるばかりの商品が荷台から沢山の音を出しても柔らかな心地よさを失わなかった風鈴屋のリアカー、夕刻のある時刻を知ることができた豆腐屋の喇叭の音、、、等々が聴こえてきました。
ところが、駅の改札で小気味よいリズムを奏でていた切符をパンチする音はICカードに反応する電子音にとって替わり、八百屋や魚屋のオヤジのダミ声が商店街から消え、巨大な集合マーケットからお魚賞賛の歌が流れる。善かれ悪かれこれらが平成の世の音でありましょう。
そして私たちは、あの日を迎えました。
震災後の一週間、東京都心でさえ、殊に夜は、灯りもなく、行き交う人々の姿もまばらな静寂が街を覆っていました。
その間に福島では、ご存知のように原子力発電所の炉心がメルトダウンし、水素爆発を起こし、巨大量の放射性物質を地上に、海に、撒き散らしてしまいました。
この人災を経て街の音にも変化が現れました。度重なる反原発デモの登場です。無論、反原発を訴えるデモは以前からございましたけれど、ツイッターなどを介して集まる(新聞用語で)アマチュア市民によるデモのなかに、それは現れたのです。
この3.11以降の反原発デモで殊更に目立つものは、コール&レスポンスによるシュプレッヒを中心に据えたデモのやりかた(も行なわれていますが)それにとって替わる、マーチング・バンドのようでいて、そうではないような、ドラム隊の登場です。
数多のスネア・ドラム、サンバの低音を支えるスルド、ホイッスル、そして数えきれない小型パーカッション類や、管楽器のトランペットが発する音のうねりは、いままで聴いたことがない音の風景を街に与しました。そしてなにより、かつてはサイエンス・フィクションの世界だけの出来事であった放射性物質に汚染されたこの国土での生活が、わたしたちの日常となってしまったのと同じく、毎週のごとく行なわれるようになった反原発デモの光景もこれまた日常と化した時代が始まったのです。
そしてその光景のなかに在るこの音こそ、3.11以降に現出した、日常に存在し、いまの風俗文化を象徴する、音風景、サウンドスケープであると確信し、幾度もデモの現場へ行き、デモ隊の皆と一緒に歩きながら、その音を収録してきました。そしてそれら魅力的な音を、再構築し、聴き易い時間にまとめたのがこの作品
「3.11以降に現出した音風景 remix」なのでございます。
3.11後の最初の12月に
新島 誠
※ サウンドスケープ【「音の風景」。1960年代に、カナダの作曲家マリー・シェーファーが使いはじめた言葉で、当初、音環境全体を作品として捉えるために作られた表現であった。20世紀の芸術活動は、環境音と楽音という二項対立を解消し、あらゆる音響が音楽の対象となる可能性をもたらした。このような音楽思想状況のなかで作曲家となったシェーファーは、非楽音とされてきた環境音に注目する。日常音に対する無関心こそ、現代の騒音問題の要因であるとするシェーファーは、70年代前半に、世界サウンドスケープ・プロジェクトを組織し、風景(ランドスケープ)と音環境の関係を調査した。サウンドスケープにおいては音は「個人あるいは社会によってどのように知覚され理解されるかに強調点がおかれる」。このようなシェーファーの概念は、二つの広がりをもった方向性、すなわち現代音楽としての側面から、もう一方は環境の思想という側面から受容されている。なお、シェーファーのこの議論の詳細に関しては、主著『世界の調律』を参照のこと。】
DNP(web版)現代美術用語辞典・この項は川那聡美氏筆 より
posted by mniijima : Dec 25, 2011
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comments
2階で展示していた3つ編みプロジェクトのkachimoです。
ギャラリーの地下で、スピーカーの真ん中に椅子置いて聞いていると
目の前に渋谷の交差点風景が広がりました。
by kachimo : December 27, 2011 5:15 PM
kachimoさま、
嬉しいコメントをお寄せいただきまして、まことにありがとうございます。
3つ編みプロジェクトさんの展示も心がほっくりとさせられる素敵な展示でした。
by M.Niijima : December 27, 2011 5:23 PM