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December 12, 2010

  若き日の瑞々しく輝く音色を誇れ(2)

前回、わたくしは今年のジュネーブ国際音楽コンクール、ピアノ部門でラヴェルのコンチェルトを弾いて1位となった萩原麻未さんのコンクール時の演奏(CD化されるなどして)を聴くことができれば、1957年に同コンクールで1位となりましたマルタ・アルゲリッチのラヴェルと是非比較してみたいと記しました。
ところがアルゲリッチのコンクール時の演奏は、レコードやCD化されておりません。

とは云うものの、そのコンクール時の演奏を想像させるに充分な音源が存在するのです。

「Martha Argerich - Piano. Ravel, Chopin」

 モーリス・ラヴェル / ピアノ協奏曲(ト長調)
 オルケストル・デ・カメラ・デ・ローザンヌ
 指揮:シャルル・デュトワ
 (1959年1月19日 スイス、ローザンヌでのライブ)

 フレデリック・ショパン / ピアノ協奏曲第1番(ホ短調 Op.11)
 オルケストル・デ・ラ・スイス・ローザンヌ
 指揮:ルイ・マルティニ
 (1959年9月25日 スイス、ジュネーブでのライブ)

 マルタ・アルゲリッチ (Piano)
 (Label: Cosentino Producciones, No: IRCO275, アルゼンチン盤)

このライブ盤の演奏は、ジュネーブ国際音楽コンクールでアルゲリッチが優勝した2年後の1959年に収録されたもので、数年前に発売され、世に出てきた貴重な音源なのです。

← アルゲリッチのラヴェルと云えば、1967年にアバド指揮、ベルリン・フィルと収録しましたドイツ・グラモフォン(以下DG)盤が有名であり、唯一の正規セッション・レコーディング盤としまして(A面に収録されましたプロコフィエフの第3協奏曲と併せて)世に君臨した名盤であります。
この67年DG盤ではセッション・レコーディングの故か、彼女にしては落ち着いたテンポで、かつキラキラと煌めく音色の目映い、少し大人なラヴェルを演奏しているように感じられます。ほんとうに何度も何度も楽しむことのできる素敵な盤です。

ところで上で紹介をいたしました59年の演奏はいかがなものでしょうか。
第1楽章、テンポの緩急の差が激しくつけられています。アクセントを強調したオーケストラに乗って天駈けるごとくの急速パート、ひとつひとつの音を慈しみながら、流れる美しさを持つ緩徐パート。ピアノ・テクニック的には完成の域に達しているのではないでしょうか。
第2楽章。この美しい、静けさと透明さを併せ持った楽章をそのままに、1音1音を大切に弾いてゆく。強弱のコントロールが憂いを含み、ことごとく美しいのです。そしてあのコーラングレーのソロ(にて1カ所、主役のコーラングレーの音がへろっとなっているのが惜しい)のバックで奏でるアルペジオ。ゆらぐ水面に映る水際の木々の葉のカラー・グラデーションが秒単位で変化してゆく様を眺めるがごとくの幸せ。
第3楽章は、Prestoの指示がありますが、これほどの高速テンポも滅多に聴けるものではないでしょう。抑えに抑えていたものが一気に炸裂し推進力を得て大団円に向けて疾走するピアノ。
(このディスク、元々はモノラル録音ですが、CDマスタリング時にリバーブ=残響効果を付加されて、その残響のみがステレオで広げられています。元々のモノラルにもホールの残響がしっかりと収録されているのに野暮な処理です。ただしダイナミクスは充分で、これもマスタリング時に拡張された形跡があります。)

このように奔放にテンポを操るアルゲリッチですが、どのくらいリハーサルを積んだのでしょうか、ローザンヌのオーケストラもよくつけておりますし、その目まぐるしさのなかにおいても、オケの透過性を失わせない指揮者も立派です。
この地元ローザンヌ生まれの新人指揮者、氏名をシャルル・デュトワと云いまして、現代では巨匠指揮者のひとりに数えられ、NHK交響楽団での(常任指揮者、音楽監督を歴任)仕事から国内でもたいへん有名になった方ですから、ご存知の方も多いかと思います。
また彼はその後アルゲリッチの二番目の夫ともなり、夫婦での共演も多く行なったわけですが、この1959年の演奏会が二人の初めての共演という日でもございました。

ときに、シャルル 22歳(デビュー演奏会)、マルタ 17歳。若き二人の演奏家が熱い情熱を注ぎながらも、どこまでも透き通った協奏を行なった眩い音楽の記録が、このディスクから聴くことができるのです。

●「Martha Argerich - Piano. Ravel, Chopin」国内amazonでは、マーケットプレイスでまだ購入できるようです。新品は海外業者からの発送ですが、かなり安くなっているようです。

(参考)
Martha Argerich Recordings (Chronological)


さて、萩原麻未さんは、いかなるラヴェルを弾いたのでしょうか?

posted by mniijima : Dec 12, 2010

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comments

「シャルル 22歳(デビュー演奏会)、マルタ 17歳。若き二人の演奏家が熱い情熱を注ぎながらも、どこまでも透き通った協奏を行なった眩い音楽の記録が、このディスクから聴くことができるのです。」
才能あふれる若い二人が出会ってきっと互いに尊敬しあい、それが恋になって行った熱い過程を思うと ドキドキしますね! 
それだけで その折の録音を聞きたくなります。
きっと 瑞々しいエネルギーに満ちているんでしょうから。

by 光代 : December 13, 2010 8:13 AM

光代さん、
確か、アルゲリッチがお好きでしたね。
機会あれば是非お聴きになってください。レコーディングとはまた違った、ライブならではの演奏を楽しめると思います。

by M.Niijima : December 13, 2010 12:18 PM

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