« コンテンポラリーなジャズの夕べはいかが? | main | 黒から白へ至る墨絵のごとき響き »

October 6, 2010

  其処にたち昇る芳気は如何なるものになるのだらうか

夕刊には、月に二度ほど楽しみにしているコラムが載っていたので、思わず食後に金宮の安焼酎に氷を加えたものを拵えてしまったのでした。
グラスをからんころんと鳴らしながらコラムを読めば、随分以前に人口に膾炙したと思われる、虫の鳴き声を日本人は楽音として聞くが、西洋人は雑音として聞くという脳の受け取り方の説を挙げ、日本の短歌、童謡などに比して、西洋の文学や音楽に虫がほとんど登場しないことを明らかにしておりました。そしてアポリネールが「動物詩集」のなかでようやっと象から、けむし、はえ、のみなどをも対象にしたことを紹介するのですが、そのテキストに音楽(歌曲)をつけたプーランクは、ざりがにまでは音楽に拵えたが、毛虫には至っていないことを残念がり、もしプーランクが虫をも取り上げていたら如何なる音楽になっただろうかという興味への想像を誘う文章でございました。

よく西洋音楽の和音を表すのに色彩的な感覚を当てることがございます。わたくしも音が音だけの縦横のフォルムと響きによって構築された古典派までの音楽に比して、浪漫派以降の音楽を解するのに、その色彩による表しはよく理解することができます。また某有名音楽振興会にて教育を受け、絶対音感を身につけた輩からは、音程、音階から色をイメージすると、よく聞かされたものです。

それらに加え、ある種の西洋音楽の中には香気、臭気、芳気といったものを感じさせる響きもあるのではないでしょうか?
例えばドビュッシーが拵えた管弦楽曲「牧神の午後への前奏曲」などからは夏の水辺からたつ強い草いきれのような臭気、香気を感じずにはいられません。もちろんこの曲をドビュッシーが拵えたとき、マラルメの詩が基にあったことは存じ上げたうえで、その詩が発信する世界を受けてのことではございますが。

明日10月7日、ピアノ・デュオ「ドゥオール」のおふたり、藤井隆史さんと、白水芳枝さんが、この著名な管弦楽曲の(作曲者による自編曲の)2台ピアノ版を東京・千駄ヶ谷の津田ホールにて披露してくださるとのこと。おふたりの栄えあるリサイタルに伺って参ります。
おふたりの演奏からは如何なる芳気がたち昇ってくることでしょうか。甚だ楽しみでしかたありません。

外からは、じぃじぃじぃ、ひひひひひ、などと虫たちが楽音を奏でる秋の夜更け。おやすみなさい。

ピアノ・デュオ「ドゥオール」オフィシャル・サイト

posted by mniijima : Oct 6, 2010

trackback

trackback URL for this entry:
http://www.mniijima.com/across/cgi/mt/mt-tb.cgi/437

comments

10月7日のドゥオールはいかがでしたか
香気・芳気かどうかは分かりませんが、僕の方は9日クイケンという稀代の名ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の演奏を聴きました
プーランクでなくクープランでしたが素敵なミュゼットでした
武蔵野市文化事業団の援助で3,000円で拝聴、ここの音楽キュレータ氏はレベル高くありがたいです

by Shin : October 12, 2010 2:13 PM

Shinさん、コメントをありがとうございます。
武蔵野市民文化会館の自主公演にはよいものがありますね。今年7月にシン・ヒョンスさんという韓国人ヴァイオリニストの公演に行きたいと思ったのですが、時すでに遅くチケットは完売であったのでした。
斯様にしてチケットの取りにくい箱でもありますが、各々のアーティスト固有のファンを捕まえているだけでなく、文化会館そのもののファンも多く抱えている結果でしょう。開館から四半世紀以上経って、このように人気の箱に成長するとは思ってもいませんでした。

ガンバを弾くヴィーラント・クイケンはクイケン兄弟の長兄でしたか、わたくしももっと古楽器に触れたいと思っているのですけれど、なかなか機会なくバロック期の音楽に疎いのです。クイケンはこの道の第1人者ですから、きっとよい公演であったでしょうね。

ドゥオールの公演の感想文は今夜あたりエントリーできそうです。

by M.Niijima : October 13, 2010 4:28 AM

post a comment




remember personal info?


(you can use some html tags.)