« MacbookのBluetooth接続を修復する | main | 生の音楽は再生メディアを凌駕する »
September 21, 2010
今年のまだ寒かったころに、京島のLOVEGARDENにて聴かせていただいた素敵なアコーディオン。世界を旅する音楽の思い出は心にずうっと残っておりました。
そのアコーディオン奏者、岩城里江子さんが、暑かった夏のまっ盛りに素敵なCDアルバムをリリースされました。わたくしは、その発売記念コンサートに行き、そこでアルバムを手にしたいと考えておりましたが、生憎野暮な用件で行くことが適わなくなり、発売後にブラジルの大河にて購入したのでした。夏のあいだ、ずうっと聴いて、遅くなりましたが、その素敵なアルバムの紹介とともに拙い感想文を添えさせていただきたく存じます。
O-KA-E-RI / Rieko Iwaki (RAKU HOUSE / RAK-3001)

※コメント欄に、近々行なわれますライブの情報ページへのリンクを追記しました。
<アルバム・レビュー>
1曲目「遠雷」。この曲に在る空気感、アコーディオンという楽器が放つ濃密な空気、それがいったい何なのかをずうっと考えていました。
遠くにありそうで、それは近く、近くにありそうで、それは遠い、母性のような芳気に包まれるのです。もしかするとそれは空気と呼ぶより、波とか、うねりと、呼んだほうがよいのかもしれません。
このアルバムは利根川運河の傍に建つ古い蔵をリフォームして、主にはギャラリーとして使われているところで録音をされたのだとのこと。想像するに、高い天井を持ち、漆喰と木の壁によって適度な反射が生まれているのでしょう。そういう残響成分が心地よくアコーディオンの生の音を包んでおります。
その響きは「遠雷」のような大きなうねりにも、2曲目「ヘーザムに降る雪」の細かいフレーズ、そして拍の裏をきざむコード音にもよく追従しており、いや、まったくよい場所で録られたことでございます。
「ホレホレソング」はハワイイ民謡を材にとった作品。ハワイイのさとうきび畑は日本から移住した人たちが多く働いていたようですが、そんなルーツが垣間みれる哀切で、かつ優しい旋律。わたくしたちのソウル・ミュージックなのかもしれません。
「阿佐ヶ谷団地」のイントロはたどたどしい指使いで始まります。そこにはおそらく白いメリンスのシャツに赤いスカートを履いた女の子の姿があることでしょう。
主部にはいりますと、テンポの在り方に感傷の気配はなく、心地よい3拍子に身体が動きだすようです。ただ曲が中盤にきてからの半音階的な扱いに幾許かの憂いが笑顔の端に浮かんでいるような気持ちにさせられます。
「ファーブルの見た空」は、2010年のこの暑かった夏に現出した新たな夏休みソングではないでしょうか。昆虫記のファーブルがなんと作曲をしていました「せみ」という曲を元に描き出された空。わたくしの、あなたの、そして里江さんの目の前に、入道雲と青い空が、汗ばむ額をかざす手の向こうに見えてくるようです。このアルバムの楽曲がインストであり、歌詞を伴わないからこそ、其処にそれを聴く者ひとりひとりの夏休みが広がることの幸福。もうイメージが詩に依存する井上陽水の世界はいらない。
メコン川は大河ですから、流れのなかのうねりは大きいけれど、とてもゆったりとしていて、人間が人間らしい生活をする、その生理的なリズムを刻んでいるのかもしれません。大陸の土砂を大量に含んだ茶色い水はところどころ渦を捲いているのかもしれません。わたくしはメコン川をテレビのなかでしか見たことはございませんが、「旅するメコン」を聴いていますと、東南アジアの生命の源になっているのでしょう大河の様子が浮かんでくるようでございます。
そして終曲は「おかえり」。この曲に代表されますように、アルバムには心落ちつく佳品がずらりと並んで、わたくしたちが大切にしたいもの、思い、それらを心のなかにそっと置いていってくださるのでした。
岩城さん、素敵なアルバムを聴かせてくださいまして、ありがとうございました。
------------------------------------
O-KA-E-RI / Rieko Iwakiを、
●amazonで購入
posted by mniijima : Sep 21, 2010
trackback
trackback URL for this entry:
http://www.mniijima.com/across/cgi/mt/mt-tb.cgi/434
comments
Niijimaさん
大事に何度も拝読させていただきました。
ありがとうございます。
拙作品にこんなにきちんと各曲レヴューを書いていただいたのは初めてで、ドキドキです。
しかし、専門家ならではのご意見、いろいろ、うーむとうなりました。アコーディオンの音に濃密って言葉ぴったり!というか、私は濃密なのが好きなんですねーー←もっと軽やかに、という人が大半と思いますが。
(しかし、ブラジルの大河でgetとはまた!!)
10月にゲストで来ていただく小森さんは元渋さにいらした憧れの奏者さんです。どんな風になるかはこれからですが、久々に楽器の方とのセッションでとっても楽しみにしています。
by iwaki : September 22, 2010 9:58 PM
iwakiさま、
ご丁寧にコメントをお寄せいただきまして、ありがとうございます。
音楽的な具体性に乏しく、表象的な書き方になってしまいましたが、まだO-KA-E-RIを聴いていない方々にとっては、もしかしたら想像が膨らむかも(もしかしたら何のこっちゃかも?)しれないと思い、こんな書き方になってしまいました。
そう濃密な空気が寄せたり引いたり、かと思えば(例の笙MODE)繊細な響きが空気を震わせたりする楽器ですね。そういった空気感がよく捕えられたアルバムだと思います。
10月の公演情報もありがとうございます。
10月27日(水)下北沢で行なわれるライブのことですね。
そうでしたか、ご共演されるクラリネットの奏者の方ですね。渋さ知らズに在籍されていたとは、きっと海千山千な奏者さんなのでしょう。それはとても楽しみですね。
by M.Niijima : September 23, 2010 1:43 AM
上の返信コメントにて触れました 10月27日(水)下北沢でのライブについては、岩城さんのページ(らくん家)をご参照ください。
http://yaplog.jp/raku_rie/archive/227
また、10月は 17日(日)にも、恵比寿にて「アートピクニック展」というイベントにて岩城さんのミニ・ライブが13:30より行なわれるそうです。
http://yaplog.jp/raku_rie/archive/226
お近くのかた、これはチャンスです!
by M.Niijima : September 25, 2010 11:45 PM
Niijimaさま
ひと月遅れのお返事になってしまって、ごめんなさい!
まったく、キャパの少ないiwakiには時間があっという間です。
27日のライブが迫ってきて、久しぶりにリズムのある曲も練習したりして、人と合わせることの喜びを思い出しています。
>渋さ知らズに在籍されていたとは、きっと海千山千な奏者さんなのでしょう
音を合わせてもらうと世界がぱあっと広がって、すばらしいです。勉強させていただいています。急に自分が変われるわけではないですけど、こんなめったにない機会ですからよく耳を済ませて飛び込みたいと思っています。
もしお時間ありましたら、ぜひあそびにいらしてください!
by iwaki : October 24, 2010 12:49 PM
iwakiさま、
お忙しいところ、ご丁寧にレスいただき恐れ入ります。
リハのご様子から察するに、これは面白いアンサンブルが期待できそうですね。
ますます27日のライブが楽しみになってきました!
by M.Niijima : October 25, 2010 11:39 AM