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April 15, 2010

  新月や神も覗いた笛の音に己が満顔羞色を帯び

ここは東京、渋谷。駅前からかつての大和田横町を抜け、道玄坂を渡って、百軒店へ。その百軒店も反対側へ抜け、円山町のホテル街にあるライブハウスへ。


彼女の出身地方【追記:注】は、彼女曰く、これ以上田舎なところは他所にないほど田舎なのだそうです。そして彼女はその地にある泉のほとりへ出掛け、ひとり、笛を吹くことがあるそうです。彼女の笛の音色が汚れなく澄んでいて、それを聴くわたしたちの心をも浄化するような響きであるのは、彼女が過ごしてきた斯様な環境が大きく影響しているのかもしれません。

篠笛、神楽笛を吹く、ことさんのライブを渋谷7th FLOORへ4月14日、新月の日に、聴きにゆきました。
和ものの笛ですが、彼女が此処で奏でる音楽はあくまでもインストゥルメント・ポップスと云えばいいのでしょうか。ドラム、Eベース、ピアノ、アコギをバックに従えた編成。そうですねぇ、例えば世界遺産の番組(ってまだ放送されているのかしら?)のようなもののオープニング・テーマにしたらとてもマッチしそうですし、映画のサウンドトラックとしてもよさそう。すなわち音楽だけを聴いていますと映像を喚起する力があるのかもしれません。
シンプルなビートのうえに、たゆたう時間を乗せたメロウな曲、奇数拍子に複雑なメロディ、多彩な展開を持つアッパー曲など、どれも楽しい。
そしてことさんの笛。ピーっと高い音域を吹いても決して耳が痛くならないのですが、これは和楽器特有の性格という以上に、細やかな装飾音がたくさんついて、そしてロングトーンの最中も息の加減が微妙にコントロールされる奏法に大きく依っているのかもしれません。さらには笛を持ち替えてアルトな音域になりますとその柔らかさに空気の密度が一層増すようにも思えます。
そしてそれらは甚く澄んでいて美しいのです。

彼女は広島の県北部の山間で盛んに行なわれているそうな神楽団(石見神楽の系流のようです)の一員を父にもつ、いわばエリート。ここまでの笛吹きになるまで血のにじむような努力があったのでしょう。そして得た音色は先に記しましたように、わたくしが訪れたことがない美しい日本の、その水に洗われて育まれてきたのでしょう。

ライブハウスを後にして、駅まで戻る途中、再び百軒店へはいってゆきました。こんな時間の此処には怪しい店に導こうとポン引きたちがうろうろしているのですが、声をかけてきたうちの一人は、わたくしに「兄さん、もう一軒どう?」と訊いてきたのです。「もう一軒どう?」と。
果たして、わたくしはそんなに満足げな顔をしていたのでしょうか?


【追記:注】風情溢るる田舎は、彼女のご賢父様の出身地とのこと、ご教示いただきました。ご本人は斯様な処へ神楽の鍛錬のために通い続けたとのことでした。
誤記に関しまして、関係各位様にご迷惑をお掛けしましたこと、深くお詫び申し上げます。(22年4月16日)

posted by mniijima : Apr 15, 2010

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