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February 19, 2010

  変ホ長調交響曲第二楽章

柔らかな陽が射し込む部屋。ターンテーブルのうえで回るLPレコード。
モーツァルト、変ホ長調交響曲、第39番、その第二楽章。
老人は身動きせず静かに聴いておりましたが、途中、傍らにいるのでしょうがフレームアウトしてその姿は見えない彼の息子へそっと話しかけます。

 「次がきれいなところだ、、、、、聴いて。」

木管の吐息のあと、弦によるメロディが高鳴ります。
そのフレーズを聴いた老人の顔から、これ以上にない優しい微笑みがこぼれました。
そして、

 「きれいだろ。」

と。


先月ご永逝されました指揮者・オトマール・スウィトナーを追悼して組まれた番組。「父の音楽 〜指揮者スウィトナーの人生」再放送を、勤め先の同僚に録画してもらい、深夜、家人が寝てから、ひとり、DVDを再生させたのでした。
件のシーンは番組開始から程なくして入ってきました。もちろんレコードの演奏は自身の指揮によるもの。
スウィトナーさんのあの笑顔は、親から子への慈しみに満ちたそれであり、かつ、ああ、この人はほんとうにほんとうに音楽を愛していらっしゃったのだと確信させるような溢れかたでございました。それを理解したとき、わたくしはもう堪えきれずにぼろぼろと涙を零してしまいましたよ。

音楽家ならば音楽を愛しているのはあたりまえでしょう。わたくしでさえ相当に愛しているのだと声を大きくすることができます。
しかしながら、わたくしは例え家族であっても他の者に、このような笑顔で音楽の美しさと素晴らしさを伝えたことがあるでしょうか。
それほど素敵な笑顔だったのでした。

先逹って、この番組を是非観てみたいと記しておりましたから、鑑賞の後は新たなエントリーを起こしてみようと、さて何をテーマに書いてみればよいかしらと、メモをとりながらの鑑賞でございました。
何故彼は東ドイツへ渡ったのか。その東での待遇。東と西の二重生活。本妻と側女、そして息子。その息子へ指揮棒を渡してみる。秘密警察の文章。シュターツカペレ・ベルリンとの再会と、震える手での一度限りの指揮、、、
それぞれ興味深いシーンでございましたけれど、わたくしにはもう充分でした。

あの笑顔を見ることができて幸せでした。
安らかにお眠りください。


posted by mniijima : Feb 19, 2010

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comments

M.Niijimaさんのこの文章に感動しました。
でも、その正体を上手く言い表せません。

エントリーのために メモを取りながら鑑賞していらっしゃりながら
「それぞれ興味深いシーンでございましたけれど、わたくしにはもう充分でした。
あの笑顔を見ることができて幸せでした。」とのみ書いていらっしゃる所に、私は スゥイトナーさんのその笑顔のような音楽への愛情と スゥイトナーさんへの敬意と 人という存在そのものへの深い 敬意に似た愛情を感じました。

そして、私もまた この文章を読んでM.Niijimaさんの様にウルッとなってしまいました。
伝染性ウルウル症?
それが 芸術の力かもしれませんね〜。

by 光代 : February 20, 2010 9:31 AM

光代さん、
分に過ぎるお言葉をいただき、いたく恐縮をしております。
もちろん今までも、スウィトナー氏のことを素晴らしい音楽家として敬っていたのですが、今回、あの笑顔を見て、一人の人間が持つ深い愛を感じることができました。

それをどれだけお伝えすることができるか、その点だけに絞ってエントリーをしたのですが、少なくとも光代さんにはそれが伝わったようで、とても嬉しくなりました。
いつも温かなお心でみてくださり感に堪えません。
ありがとうございます。

by M.Niijima : February 20, 2010 2:37 PM

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