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January 17, 2010
東ドイツというのは不可思議な国であったというのが、国際情勢とか政治の門外漢であるわたくしの率直な思いです。東側の国であったはずなのに、人も物資もだいぶ西側と行き来があったように感じられるのです。その反面、ベルリンの壁が象徴していたように分断があったことも事実なわけです。
わたくしが面識ある唯一その国に生まれた音楽家トルステン・ラッシュは、いまでこそゲンダイオンガクや映画音楽の作曲家ですが、学生時代は東ベルリンでバンド活動しておりました。ところがインディーチャートの上位に食い込むといった人気ぶりは西ベルリンでのこと、わたくしにはまったく?なことであります(おそらくは放送電波などが情報の媒介となっていたのでしょう)。
前回、追悼記事を書きましたオトマール・スウィトナー氏はオーストリア出身で、西側でキャリアをスタートしたのだそうですが、1960年にドレスデン国立歌劇場(現、ザクセン州立歌劇場)に着任してからは、以降ベルリン国立歌劇場と、活動を東ドイツを中心に行なっていたとのことです。(詳しくは、wiki)
ところでスウィトナー氏が指揮を振った多くの音源は、東ドイツの国営企業でありましたドイツ・シャルプラッテンが制作しておりました。
東側のレコード・レーベルでは旧ソ連邦のメロディアが有名ですが、メロディアの悲惨な音に比べて、シャルプラッテンはいま聴いても惚れ惚れする素晴らしい音が魅力です。
前回ご紹介した「フィガロ」も「魔笛」もそのシャルプラッテン・サウンドを堪能できる作品。わたしが所有している「フィガロ」はこのシャルプラッテンを米国で販売していたセラフィム・レーベルの盤で、米国の音らしいカッティング処理を経ており、ブライトでジョリっとした仕上がりになっておりますが、音楽的な魅力を減じてはおらず、逆にスウィトナーのキビキビした演奏にとてもマッチしております。そしてなによりシャルプラッテンによる元々の録音が素晴らしいので活き活きとしたドタバタ・オペラが表されております。
このようにシャルプラッテンの音源は当時から様々な国で紹介されており、日本でもいくつかのレコード・メーカーによってLPの時代から知られた存在であったと思います。東の崩壊後、主立った音源はベルリン・クラシックというレーベルが引き継いでおりますが、いくつかのライセンスは他国のレーベルも所持しているようで、「魔笛」のほうはRCA CLASSICSレーベルとして(これも)米国BMGから発売されたCD。こちらもジョリジョリした米国風サウンドが付加されてしまっておりますが(おそらくは彼らの機材を通過しただけで、こういった味付けが加わるのではないかと想像)、やはり元々の録音が優秀なのは一聴にして判る名盤。
ことほど左様に旧東独というカーテンの向こうで、シャルプラッテンというレコード・レーベルは、冷戦まっただ中の1960年代においても現代に通じる素晴らしい仕事を為していたということに興味が尽きません。
posted by mniijima : Jan 17, 2010
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comments
さすが、M.Niijimaさんならではのエントリーですね!
録音が「ライトでジョリっとした仕上がり」だとか、「ジョリジョリ」だとか、絶対 私には聞き分けられないような録音の違いについて 書いていらっしゃるのが貴重な不思議な興味深い事です。
「録音の優秀さが一聴にして分かる」だなんて! 私にはきっと分からない事でしょう。
そう言う耳を持っていらっしゃると また全然違う楽しみ方ができるんだろうな〜〜〜〜。
(1)と言うからには 続きがあるんでしょうね、楽しみです。
by 光代 : January 18, 2010 7:49 PM
光代さん、
いやぁ、まったくもって自分の文章表現力の拙さを実感致します。
ジョリとか、ジョリジョリだなんて!
「歪んでいるわけではなのですが、波形(を見たわけではありませんが)的に、髭がくっついているようなサウンド」とか、「芳醇なヴァイツェン・エールの味に対する米国のライトビールのような味」などと言えば、読んでくださる方々にはもっとはてなでしょうしね。
by M.Niijima : January 19, 2010 10:35 AM