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July 22, 2009

  撫で、擦り、引っ掻きあげるから、わたくしを掻きむしる。(3)

1楽章開始直後を意外にも淡々と奏で始めた庄司紗矢香さん。段々と情感を高めてゆきながら撫でるようなソットヴォーチェで次の楽想へ、ときおりむせび泣くような低音が混じり聴いているわたくしの気分を嫌でも高揚させます。

7月10日に衛星放送でオンエアされました「N響演奏会ー第1649回定期公演ー」から、プロコフィエフ作曲 ヴァイオリン協奏曲第1番。
ソリストの庄司紗矢香さんは、細い肩が露な黒地に桜花と舞う花弁が描かれ(刺繍なのかどうか、画面では判らず)、裾は踝までのため可憐なアジアンの印象を強く醸し出すドレスを召していらっしゃいました。

2楽章、チョン・キョン=ファさんの演奏では左手のポルタメントが印象的でありましたエスニック(?)なパート。ここで庄司さんの右手はきつく弦を擦り、なんともお下劣な音色を奏でるのです。Brava! もちろん行ったことはないのですが、まるでカザフスタンの安料理屋で繰り広げられる民俗舞踏ショーのような(中央アジアは弦楽器の宝庫!)世界観を想起させ興趣に尽きません。その後のパートでの洗練された音色の速いフレーズと舞踏ショーを引きずった音色が交互に飛んできます。グッガッガッガと刻むこれまたお下劣はアップ・ボウで引っ掻きあげられます。
そして3楽章、ファゴットの軽妙なフレーズに導かれての美しい主旋律。そして次のウンチャチャチャとリズムを刻むところ、一度オケ全強奏に流れを渡した後の2回目、1度目に比してスタッカート度を増していまして指揮のノット氏に軽く微笑む庄司さんも楽しそう。

残念なことにNHKの放送はソロの音量が甚だ大きく(悪しきマニュアル、または徒弟か伝統か)、このような楽曲ではオケとの協奏感が気弱になってしまいます。だいたいからしてこのウンチャチャチャ・パートはオケの弦楽が主旋律を奏でているのですが、ソロの音量のおかげで耳は(頭は)自然な(ヴァイオリンからオケへの流れの)切り替えを行なうことができません。
一般的視聴者は、このようなバランスを聴いてしまうと、オケや指揮者は何をやっているのだ、ということになってしまうのですから視聴者への「伝わりかた」というものをもっと考えなくてはいけませんねぇ。昭和歌謡曲ならよいのですけれど...

豊かな音色のヴァリエーションと、この放送局による音楽的アンバランスのおかげでヴァイオリンが何をしているのか、その詳細をとくと聴くことができましたのは音楽にとっては甚だ皮肉なことでありましたが、全ての音に意思が籠められていることを強く認識できる演奏は終始わたくしの心を掻きむしっておりました。
終盤はハープのアルペジオが美しく和声感を支え木管の受け継ぎを背景に、よく歌い、よく泣いてくれた庄司紗矢香さんの名演でございました。

posted by mniijima : Jul 22, 2009

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