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March 8, 2009

  かつての荒野に響く、壮麗な音の伽藍(2)

オケ全強奏によります4小節に続きチェロのカデンツァが始まります。ハンス=マルティン・シュナイト指揮、神奈川フィルハーモニー公演「名曲コンサート 珠玉の名旋律」の第1曲目、神奈川フィル主席チェロの山本裕康氏は甘く柔らかな音でカデンツァを弾き始め、それはヴァイオリンへと引き継がれてゆきます。普段は指揮者にもっとも近い席に着きオケを引っ張るコンサートマスターであります石田泰尚氏。すらりと高い背に、とんがった茶髪にピアス、神奈川フィル公演のロビーでは「俺様 石田泰尚」と書かれたTシャツも人気の若きコンサートマスターでありますが、今日の第1曲目はすくっと立ったまま、ソリストとしての出演です。チェロから渡されたカデンツァを美しく繊細な音で弾いてくださいます。素晴らしいヴァイオリニストですね。

初めてのMUZA川崎でのオケの音は若干中域がはり出したようなバランスで少し明瞭感が損なわれているように聴こえたのは席(4階席、といってもあまりステージからの距離感を感じない)の位置でしょうか。それともオケのバランスだったのでしょうか? 楕円のホールに上弦の月と下弦の月を互い違いに重ねていったような2、3、4階席は、原型をベルリンフィルハーモニーホールに、国内ではサントリーホールに求められますワインヤード方式が採用されているそうですが、ここまで徹底した左右非対称性、平行壁面の駆逐は見たことがございません。
それでもこの楽章、神奈川フィルの弦セクションの全奏ではたいへん瑞々しい音が高らかに響いておりました。

やさしく歌う2楽章では、独奏チェロとヴァイオリンの甘美な音に酔いしれました。そして続く第3楽章。ユーモラスな主題旋律はヨーロッパのどこかの地域の舞曲から引用されているのでしょうか、それともジプシーのものかしら? わたくしが楽しんできた同曲の演奏(ワルター指揮、フランチェスカッティ=Vl、とフルニエ=Vcによる1959年か60年収録のLPと、ロンドン交響楽団自主レーベル作品、ハイティンク指揮、2003年収録のライブCD)では舞曲らしく跳ねる感じをよく醸し出したものでしたが、この日のシュナイト氏・神奈川フィルが施したアプローチは徹底したテヌートによって舞曲旋律らしさが排除されているように思えました。それによりブラームスの練り上げた構成美が浮き上がり、元々彼の第5番目の交響曲として着想されたこの曲のルーツを思い起こすこととなったのでした。

公演前半の演奏を終え、満席の会場から高らかな拍手が贈られました。このホールのキャパはおよそ2000弱です。そのほとんどが埋め尽くされた公演。いまのシュナイト=神奈川フィルの人気をうかがえます。
アンコールはチェロの山本氏の紹介によりカザルス作曲の「鳥の歌」が演じられることに。石田氏がオケのヴァイオリン、1stプルトの2人を従えて弾き始めます。繊細な音にシュナイト氏も耳をそばだてているように見えました。そして山本氏のチェロが動き、オケの主席チェロが下を支える五重奏。2000人の聴衆が息を飲むまさに珠玉の音色がたった五本の弦から紡ぎだされてゆくこのアンコールも素晴らしかったです。
さて、20分の休憩の後、昨秋の定期公演時に購入し、何度も聴いてまいりましたシュナイト=神奈川フィルのブラームス第1交響曲のCD(2005年のライブ盤)。この素晴らしい演奏の再演を期待すべくプログラムが始まるのです。

posted by mniijima : Mar 8, 2009

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comments

「徹底したテヌートによって舞曲旋律らしさが排除されている」
う〜〜ん、面白そうですね。
もう何十年も(!)まともにブラームスを聴いていないので、うろ覚えのいい加減な記憶をたどると ブラームスらしさがひき立っているんじゃないかなと感じます。
M,Niijmaさんのブログに来ると、私には音楽が足りていないな〜〜と思います。

いよいよ 私の好きな交響曲の一番が始まるんですね。
楽しみです。
チューニングタイムのような ワクワクした気持ちでエントリーをアップなさるのを待っています。

by 光代 : March 9, 2009 9:51 AM

光代さん、
ブラームスは欧州の舞曲を題材に採った曲をいくつも書いていますよね。殊に有名なのは「ハンガリー舞曲集」でしょうか。
これらを舞曲らしく演奏する以上に、交響作家としての彼の立ち位置を明確にする場合、今回のようなアプローチは有用なのだと思います。
仰るとおり、わたくしにも「ブラームスらしさがひき立って」聴こえましたよ。
次回、第1交響曲のエントリーまでしばしお待ちください。

by M.Niijima : March 10, 2009 12:25 AM

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