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February 13, 2008

  昇華サレルニ必要ナコト(2)

前エントリーにて、今回、清家冨夫さん作品展の主題となっております、イングランド、ブライトンのWest Pierについて、簡単にご説明をさせていただきました。
嵐と火災により倒壊しました19世紀の建築物。それは世界的にも珍しいPleasure pierで、その廃墟を濃い霧の日に見てみますと、徒ならぬ光景が垣間見え、それを機に霧がでた日を選んで撮影を繰り返したのだそうです。
このことを単純に受け止めますと、なんとロマンティックな、まさに19世紀的な、と思ってしまいます。人類が造ったものが、老朽化し、ついに自然の力に抗えなくなった、その姿、その刹那を切り取った、なんてことは誰もが云えることですが、わたくしは、ここからも清家さんの作品づくりに、透徹した意志を感じるのです。

昨秋、目黒のアート・フォト・サイト・ギャラリーで開催されました同氏の「Portraits of ZOE」展を拝見しました後のエントリーにてわたくしは、
「斯様に芸術家というものは、作品の骨格となる独自の手法を持ち、いささかの躊躇もなく繰り返しそれをベースとして肉をつけてゆく。そこに作家性、或いは個別性というものを表出しているのだと、これら撮影されてから20年経たネガからの新しいプリントを拝見し強く感じた次第でございます。」
と記しましたことを思い出します。

濃い霧は、遠景視界を阻み、陽も射さなければ、明度の幅(一番明るいところと、暗いところの差)が極端に狭く、かつコントラストも低いという特殊な状況を生み出します。遠景が靄っていますと、それだけで雰囲気が得られると期待してしまいますが、それを魅せる作品に高めるのは至難であると思われます。

今回の「WEST PIER」のプリントは、ダイナミックレンジ(明度の差)が狭く、コントラストも低いものでした。ところが濃霧によって阻まれた遠景は見事に省略されており、対象となる桟橋のみが浮かび上がる結果を招いております。そして桟橋そのものは決して明確なシャドウを形成しているわけではございません。なによりいちばん黒いところは充分に採られたネガの未露光部を焼きだした枠であるのです。それでも桟橋自体は単純な構造と、そして崩落している部分のより複雑化した骨組みが、具象の明確化と同時に抽象化を果たしていると感じられ、フレームの中で、その存在を、しっかりと、刻印しているのが見て取れました。
素材、すなわちWEST PIERという存在が有するロマンティックな気分、そして濃霧によって生みだされました柔らかな画質を伴いながらも、対象を明確にし、造形のなかで、しっかりと伝えるものを持たせた作品群は、まさにこの芸術家の真骨頂でありましょう。WEST PIERは、この明確な芸術家の審美に触れ、写真として定着される上で、一層上の次元に高められたのだと、これをまさに昇華と云うのであると、いつもの清家さんの作品クオリティに触れることが叶った喜びを噛みしめたのでした。

「WEST PIER」シリーズの展示はgallery bauhausさんの地階フロアに並んでございました。1階では同氏が80年代のロンドンで出会った人々のキャンディドなポートレート作品が、立体感に満ちたプリントで掲げられておりました。この撮影時期には、わたくしも若かりし日々を日本で過ごしておりましたけれど、サッチャー時代の英国、不況に喘いでいた英国の、パンクの熱も様々なかたちで分散し、ニュー・ウェーブと、ニュー・ロマンティックのムーブメントに覆われた雰囲気を懐かしく、楽しむことができました。

今回は、開期最初の週からうかがうことができました。展示は桜が咲く頃まで行なわれておりますから、時間がとれれば是非再訪したいと願っているところなのです。

再度、展概要を記しておきます。

清家冨夫写真展「WEST PIER」
会期:2008年2月5日(火)~4月5日(土)
時間:11:00~19:00
休廊:日・月・祝
入場料:無料
会場:gallery bauhaus(東京都千代田区外神田2-19-14-101)

posted by mniijima : Feb 13, 2008

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comments

う〜ん、これを読んでますます行きたくなりました。
私は無知なので おっしゃってらっしゃる事の半分も知りませんが、M.Niijimaさんの感動を 自分で確かめたくなったのです。一緒に味わいたいという言い方が良いのかもしれません。

昇華・・・・久しぶりに聞いた言葉です。そして使っていらっしゃるM.Niijimaさんにとって その言葉こそがとてもリアリティの有る言葉だと分かります。
それを見たい!

アートは 作る人もですが、また その感動を伝える人が重要です。
「伝わらなければ無いのと同じ」

伝える仕事もまた とても重要だと思い、いつかはそんな仕事をしたいと思っています。

by 光代 : February 13, 2008 8:05 PM

光代さんのようなコメントをいただけますと、このエントリーを記して、ほんとうに良かったと思えるのですよ。ありがとうございます。
前エントリーのコメントで3月にと、ございましたが、もしお仕事の合間にお時間が作れるようでしたら、是非にと、お勧めいたします。その際、お声をかけていただければ、ご案内させていただきたく存じます。

> 昇華・・・・
> その言葉こそがとてもリアリティの有る言葉だと分かります。

お察しいただけましたこと、無上の喜びでございます。

そして、感動を伝えること、素晴らしいものを伝えること、秋田道夫さんも書かれておりましたね、
"知ってもらわないといいデザインに申し訳ない"
と。アートも同様で、よいものは、より広く知られる必要があると思います。その先で、理解できる、できない、よいと思える、思えないの判断が行なわれればよいと思うのです。まずは知っていただく、そのために何を為すべきか、とても大切なことだと思います。

by M.Niijima : February 14, 2008 12:34 AM

昨日(16日)友人が変わりに[WEST PIRE」に行ってくれました。
この写真家は真剣勝負で写真を撮っていると感じたそうです。4周にフィルムの縁が写り込んでいるのに文句の着けようの無い構図(トリミングなど必要がない)大変勉強になった等々とメールが来ました。
教えていただいてありがとうございました。

by chatnoir : February 17, 2008 8:28 PM

chatnoirさん、
そうですか、展示にご友人が行っていらっしゃったのですね。
清家氏の作品には、学ぶところが沢山ありまして、ご友人が仰っているよう、確かに構図も、そのひとつでしょう。
真剣勝負だからこそ、鑑賞者に強く訴えるものがあるのですね。

このような素晴らしい展示を多くの方々と共有したいと思っておりますので、ご友人にご紹介いただきましたこと、厚くお礼申しあげます。

by M.Niijima : February 17, 2008 10:33 PM

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