« 川からは空が見えるのが望ましい(13) | main | 川からは空が見えるのが望ましい(14) »
January 9, 2008
川の地図辞典 / 水路をゆく写真の合間に
壁一面に日本地図と世界地図を貼る。小学校3年生になりまして、親から与えてもらった小さな小さな部屋で、わたくしが最初におこなったことです。その部屋で空想上の旅行を何度楽しむことができたでしょう。あるときは奥羽山脈上空を飛びまして八甲田や蔵王山に遊び、あるときはハンカ湖、バイカル湖、イシク湖からカスピ海へ、ユーラシアの湖を飛び越えてゆきました。
以来、地図を見れば、それが見慣れた都内の道路地図でありましても、しばしの時間を楽しむことができる特異な趣味を得るにいたりました。
ところで今回もKai-Wai散策さんにて、たいへん興味深いエントリーを拝読しました。なんと地図好きには垂涎ものになりますでしょう『川の地図辞典 江戸・東京/23区編(菅原健二著・之潮(コレジオ)』という本があるというのです。
水辺の写真を撮り始めまして、開渠だけでなく、暗渠や、既に埋め立てられてしまいましたかつての水路にも興味が芽生えた昨今、この本は必須と早速買い求めました。過去に流れていました時間とともに埋められてしまった水路が放つ濃厚なまぼろし。水路はわたくしの妄想の根幹を築き、創作の発端となる大いなる可能性を秘めております。
ところが文献資料だけではなかなかイメージできない見えない水路ですが、この本のように地図で示していただければ、それを頼りに歩いてみることができます。例えば渋谷川と目黒川にはさまれた旧山手通りに沿うように在った三田用水のことなどです。
ところで永井荷風の「日和下駄」四番目の「地図」という項には、彼が蝙蝠傘を持ち、日和下駄での市中散歩の際には江戸切絵図を携行するとあります。そして牛込弁天町あたりを歩けば、裏通りに小流れがあり、根来橋(ねごろばし)を見つけ、其処にはかつて根来組同心の屋敷があったことを切絵図によって知り嬉しくなったと記しております。切絵図の情報が彼をはるか江戸の町に連れてゆく瞬間なのでございます。
そこでわたくしは『川の地図辞典』のページを捲り、新宿区の地図から、荷風が江戸に思いを馳せた小流れが(いまは暗渠となりました)蟹川の支流であったことを知るのでございます。
さて、この地図辞典には明治のころの参謀本部地形図(迅速測図)が現代地図と対置されておりまして、その古い地図に記されました地図記号は、わたくしのあらたな妄想の原点になりそうです。
水路脇に在った水車小屋からは、水がこぼれる音とともに、ギギィという軋み、カタコトスイィと臼を擦る音が聞こえてくるようです。
さて、この夢がひろがる素敵な本ですが、まだ置かれている書店は多くないようです。わたくしはジュンク堂書店/新宿店にて買い求めました。7階の人文地理のコーナーに表紙を面出しして置かれておりましたです。
ほかでは同書店池袋本店と神保町の岩波ブックセンターにも置かれているそうですが、出版元の之潮さんのサイトから購入できるようです。
※(2008.1.21追記)Amazonでも取り扱い開始したようです。「[新刊] 川の地図辞典 江戸・東京/23区編 (大型本)」

川の地図辞典 江戸・東京/23区編
[フィールド・スタディ文庫 Collegio Field Studies 1 ]
菅原健二著
本体価格3,800円+税(190円)
ISBN978-4-902695-04-5
※Kai-Wai散策さんは、さすがに人気ブログですね。この本がどんどん広まっているようでございます。
<関連エントリー/書籍紹介編>
・wakkyken (わきた けんいち) さん、『Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」』、
「『川の地図辞典』(菅原健二/著)」 / 「『川の地図辞典』(その3)-“ご近所ブログ界”の展開-」
・玉井一匡さん、『MyPlace』、「川の地図辞典 江戸・東京/23区編」
・秋山東一さん、『aki's STOCKTAKING』、「川の地図辞典」 / 「川の地図辞典 /2」 / 「「川の地図辞典」出版記念ウォークと懇親会」
・光代さん、『My Favorite Things』、「川の地図辞典」
・iGaさん、『MADCONNECTION』、「川の地図辞典-1」
・chatnoirさん、『愛のいたみ Ⅲ』、「北国の黒猫:『川の地図辞典』」
・braryさん、『東京brary日乗』、「川の地図辞典追記」
----------------
<関連エントリー/書籍活用編>
・masaさん、『Kai-Wai散策』、「『川の地図辞典』の私的チューニング」 / 「『川の地図辞典』の私的チューニング (2)」
・じんた堂さん、『東京クリップ』、「フィールドワーク:尾根を行く川」
・wakkyken (わきた けんいち) さん、『Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」』、
「『川の地図辞典』で金魚池を探索する」
・玉井一匡さん、『MyPlace』、「「20km歩き」と「川の地図辞典」」
・iGaさん、『MADCONNECTION』、「川の地図辞典-2 消えた梅田堀」
posted by mniijima : Jan 9, 2008
trackback
trackback URL for this entry:
http://www.mniijima.com/across/cgi/mt/mt-tb.cgi/241
comments
こんばんわ。いや、なんと神田川・柳橋を絡めての写真付きとは…渋く素敵ですね〜。これは参りました。
ところで、このエントリーを「川の地図辞典」の中央区を開いて拝読していますが、地図で見ますと、明治中期と現在では、この河口部分の様子がかなり違っているのが手にとるようですね。やはりこの辞典は便利ですね。
そして、リンクを張っていただき、ありがとうございました。拙ブログからもリンクを張らせていあだきました。
by masa : January 9, 2008 9:46 PM
masaさん、今回もすばらしい情報をシェアしてくださり、ありがとうございます。運河好きotokoとしましては、もう絶対でした(^^;
仰るとおり、神田川河口付近はずいぶん違いますよね。まず一番は隅田川に架かります両国橋が、現在より下流にあって、回向院に向かって架かっていることがよく解ります。
そしてmasaさんが書かれていましたがp148~149! うわぁ、って感歎の声をあげてしまいました。
リンクもありがとうございます。
by M.Niijima : January 10, 2008 12:39 AM
M.Niijimaさん、はじめてコメントさせていただきます。拙ブログの関連エントリー、リンクしていただき、ありがとうございます。こちらのエントリー、カッコいいですね~。masaさんもお書きになっていますが、「渋く素敵」ですよ(^^)/。
by わきた・けんいち(wakkyken) : January 10, 2008 12:26 PM
わきたさん、お呼び出しをしてしまったようで恐縮です。
わきたさんの知に満ちたエントリーに比して、妄想だの、まぼろしだのと、お恥ずかしいかぎりのエントリーですが、何卒ご容赦くださいませ。
ケータイ写真にも好意的なコメントをいただきまして、重ねてお礼申しあげます。
また、是非お越しくださいませ。
by M.Niijima : January 10, 2008 4:59 PM
この写真が好きで 何度も見に来てしまいます。
携帯写真だったんですね。
東京の方々は この本を有効にお使いになれてうらやましいな〜と思います。
ドンドン広がって 一杯売れたら 大阪版も出版されますかしらね?そこまで行きたいものですね。
by 光代 : January 11, 2008 11:10 AM
うわぁ、光代さんも! ありがとうございます。
そうなのです。本を買ったら、柳橋(この写真、奥に写っている橋)に行きたくなりましたが、持ち合わせていたカメラが携帯しかなかったのでした。
此処はとても良いところなのですよ。
大阪はほとんど訪れたことがないのです。7年前に出張で江坂にゆき、帰りに少しだけ梅田の駅周辺を散歩した程度。土地感もなにもないのです。
が! この本の大阪版が出たら絶対に買っちゃいます。
そしてあらたな妄想に浸るのです(^^;
by M.Niijima : January 11, 2008 1:06 PM
3年生から地図のとりこですか、うらやましい。
ぼくは、高校まで地理が嫌いでした。統計やらなにやら、暗記しなきゃならないことがいっぱいあると思っていたのです。はじめが肝心ですね。地理でなく地図の楽しさを子供に教えてやばいいのにね。地図のたのしさを知ったのは、恥ずかしながら大学生になってからでした。
by 玉井一匡 : January 12, 2008 11:15 PM
玉井さん、
わたしも地理の授業はろくに聞いておりませんでした。なにせ地図帳を開けば、勝手にあちこち飛んでいっておりましたから。
ところで小学校では社会科に含まれる地理ですが、郷土史的なサブジェクトには反応しておりました。
わたしは武蔵野市の旧赤星鉄馬邸であった(現)修道院近くにある市立小学校に通っていたのですが、授業で教わった玉川兄弟による玉川上水の造成の話しには、かなり惹かれました。もしかすると(masaさんからいただきました)「運河好きotoko」の素地はそのころ出来たのかもしれません。
リンクしていただきまして、ありがとうございました。
by M.Niijima : January 13, 2008 12:43 AM
柳橋を背景に撮って頂いた「川の地図辞典」の写真を是非、ちらしに使わせていただきたく存じます。現在のちらしは、書店用でかたい感じがします。えー、川好きotokoこと社長には相談無しですが、大丈夫ですから…。
デザイナーどころかPCでのレイアウトもろくに出来ない私ですので、きれいに仕上がらなかったら、ごめんなさい、です。版権その他の問題で、ご連絡お待ちしております。
by 川好きonna : February 10, 2008 8:56 AM
川好きonna様
ご連絡をありがとうございました。
ご依頼の件、メールにてお返事を送信いたしました。
どうぞご確認くださいませ。
by M.Niijima : February 10, 2008 10:12 PM