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June 30, 2007

  六月のみそぎ

吉原御免状」という小説があることを最近のお気に入りのブログから知りまして、今春に読んでみました。著者であります故隆慶一郎氏は脚本家としての人気作家でありまして、この「吉原御免状」が隆氏61歳のときの小説デビュー作であったとのことです。

時代小説ですが、ストーリーテリングの見事さにより、文庫にして500ページの長編を一気に読んでしまいました。
吉原成立秘史に迫る内容で、なぜ吉原だけが御免色里として成立できたのか、神君御免状とは何か、なぜ裏柳生が狙ってくるのか、主人公の剣士・松永誠一郎とは何者なのか、畳み掛けてくる謎が明らかにされるに従い、読み手はぐんぐん引き込まれる、そんな小説でございました。
そしてその舞台では「傀儡子(くぐつ)」や「道々の輩(みちみちのともがら)」(このあたりの歴史用語につきましては隆慶一郎氏の門下生による隆慶一郎オフィシャル・サイト内「歴史用語の基礎知識」が詳しい)らが大活躍するのですが、これはまったく網野善彦氏による歴史観であるところが驚きでもあり、かつ楽しかったです。

さて、隆氏には「かくれさと苦界行」という「吉原御免状」の続編にあたる作品があるとのことでしたが、しばらくは手に取りませんで、いかがしようかと思っていたのです。
ところが先日、書店にてちらっと、この「かくれさと苦界行」のページを捲ってみますと、何ということでしょうか、その冒頭に完全にやられてしまいまして、そのままその文庫を持ちレジに足を向けておりました。
ではその冒頭を引用させていただきますね。

『川祓(かわみそぎ)
 大川(隅田川)では、例年六月の晦日になると御祓(みそぎ)が行われる。江戸各所の神社が、神主と氏子の者でそれぞれ舟を仕立て、両国川を宮戸川へさかのぼる。舟の中で神主が祝詞を誦し、終ると氏子たちが形代を川へ捨てる。形代は藁人形で、人々は自分の罪障や病い、苦しみや悲しみの一切をこの人形に転移させ、それを大川に流すのである。六月祓、夏越しともいった。』


※『』内は「かくれさと苦界行/隆慶一郎」(新潮文庫)より引用
※拙注:両国川は大川=隅田川の別称、まさに両国あたりの流れを指していたのでしょう。宮戸川も同様で、こちらは浅草辺りを指しているようです。

posted by mniijima : Jun 30, 2007

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comments

こんにちは。「吉原御免状」を読んだときのことはわたしも忘れられません。ダイナミックな網野史観を爽快感に溢れるエンターテイメントとして展開した、すばらしい時代小説ですね。
ご興味があれば、傑作「影武者徳川家康」もおすすめです。あまりひかれないタイトルかもしれませんが、ここでも傀儡子や忍者が歴史を動かす重要な役回りを演じているのです。

by brary : July 1, 2007 9:49 AM

braryさん、
「吉原御免状」「かくれさと~」はほんと素晴らしかったです。
次は後水尾天皇を描いた「花と火の帝」を読もうと思っていました。
「影武者~」は恐らく「吉原御免状」の世良田二郎三郎のところを膨らませて書かれたものと想像しております。
こちらもとても楽しそうですね。

「影武者~」も、「花と火~」も、どちらも複数刊によるものですから、夏休みとか、正月にまとめて読んでしまおうかと考えております。

楽しみが広がるコメントをありがとうございました。

by M.Niijima : July 1, 2007 6:09 PM

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