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May 18, 2007

  80年前のストリート・スナップ

写真好きでありながら、普段あまり写真集なるものを購入しないわたくしですが、その理由は以前に記しました。
ところが今年2月に出版されたある一冊、おそらくは(出版元には申し訳ないのですが)あまり注目されることもないでしょうし、ローカルで、小規模な出版元(決してネガティブな意味で云っているのではありません。逆に今後も良品の出版を期待してしまいます。)故に増刷される見込みも少ないだろうと勝手に判断しまして、思い切って購入してみました。

はこだて記憶の街 / 熊谷孝太郎・撮影(Mole、はこだて写真図書館叢書版)

さてこの写真集ですが、1920年代から30年代の函館の街と人々を、アマチュア写真家である熊谷孝太郎氏がガラス乾板を仕込んだカメラでスナップしたものです。
かつてのこの国でのスナップといいますと、ライカA型によってはじまる1930年代からの木村伊兵衛氏の仕事がまず思い出されるところですが、それに先駆け、一地方都市のアマチュアが1枚1枚乾板を交換しながらスナップを撮り続けていたことに驚きを感じます。
この熊谷氏が撮影し、残っていた乾板数千点のうち、500点を選出、そこからさらに100点に絞ってまとめあげたのが本書であるとのことです。

写真には、原版に傷がはいっているものがあったり、シャッター速度が足りず、歩行者がブレているものもございますが、そういった面をまったく無視して観ることができる内容だと思います。
かつて在った街並みに、日本髪を結った女性の姿や、子供達、そして外国人の姿も(建国直後のソビエト連邦はロシア正教を弾圧していたとのことで、当時の函館には亡命者が数多く居住していたそうです。)写っていました。
わたくしはその函館に訪れたことがありませんので、この本を勤務先の同僚で函館出身者に見てもらったのですが、「この奥に見える建物は○○だね。ここはあの交差点からじゃないかしら(本書には各写真がおおよそ街のどこで撮影されたかという資料も添付されています)」などとコメントをもらいつつ、かつネットで函館各所の(現在の姿)写真と見比べながら、ページを捲っていると、より当時の街並みに親近感を覚えることになりました。

ところで、熊谷氏はこれらの写真を何かに発表しようとか、記録として残そうという意思がなかったそうです。あくまでも個人的な趣味として撮影された写真。そこには鑑賞者の視線を釘付ける確信犯的な創意が欠乏していることを否定できませんが、それ故に淡々と被写体に向かう無垢な姿勢から、一人の男の興味が街の中でどのような視線の軌跡を描くのかを示しているようでたいへん興味深いです。もちろんこの写真集に使用されたプリントは撮影者本人によるものではありませんので、現場を捉えた者のリアルな熱を帯びていないということ、そしておそらくは編集行程がかなり影響しているのだと思いますが、それでも彼がシャッターを押した事象はストリート・スナップ写真のかなり本質的な部分を表しているのではないかと、わたくしは思うのです。

posted by mniijima : May 18, 2007

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comments

こんばんは。ご無沙汰してすみません。
さっそく、覗いてみました。もちろん、「なか見!検索」も。
う〜ん、なんだか、ポチっとしてしまいそうです(笑)。特に、
極東ロシアとの距離感に惹きつけられます。

by MB : May 18, 2007 10:58 PM

MBさん、こんばんは。
ロシア人は写っているのですが、ロシアっぽい風景、例えば函館ハリストス正教会(江戸時代に建てられ、その後火災で消失。大正時代にロシア風ビザンチン様式で再建だそうです。全て受け売りです。)の傍で撮ったものがあるのかどうか、本には掲載されていないのですよ。
それよりも、ロシア人たちが江戸期、明治期っぽい建物の前で写っているのが不思議な感じです。

コメントをありがとうございました。

by M.Niijima : May 19, 2007 4:16 AM

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