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<柳橋日記、遠征編 山谷掘 その1>
久しぶりに冬らしく寒い一日でした。
柳橋から小舟を急がせ 山谷堀~
以前「柳橋から」という江戸小唄の詩、をご紹介しましたが、寒気が覆った24日土曜日に、その山谷堀跡まで行ってまいりました。
ここは柳橋から大川を猪牙舟(ちょきぶね)と呼ばれた船足の速い小舟で上り、吉原へ遊びに行く旦那たちが経由した堀があった処でございます。ただいまは暗渠となり、その上は遊歩道のような公園に様変わりをしております。大川から堀にはいる口には水門がございますが、堀が暗渠となっているためこの水門も周囲をコンクリートで固められ上部構造だけをずんぐりと突き出した恰好で、南に草野球場、北にスポーツセンターに挟まれた河岸に不似合いな姿を晒しております。
今日では猪牙舟を駆ってというわけにはなりませんから、柳橋最寄の浅草橋駅前よりバスに揺られてゆきました。江戸通りを北上し、蔵前、浅草と経由、言問橋西詰めの五叉路から吉野通りに入ります。今戸の停留所までいってしまいますと少し遠くなりますので、手前の浅草7丁目で下車。この吉野通りがかつて堀を渡っておりました吉野橋跡より、暗渠上の公園を歩きます。夏場は水が張られるのでしょうか、人工の流れが、寒風に吹かれるまま石底を晒していました。ときおり飼い犬を散歩させる人とすれ違うだけの寂しい夕暮れでございます。
待乳山聖天(まつちやましょうでん)神社のある高台を右に見上げ、そして永井荷風の中編「すみだ川」で長吉がお糸を待った今戸橋、その橋柱跡を見て、大川と平行する江戸通りを渡ります。隅田公園内に入りますと野球少年たち、スポーツセンターに来た人たち、犬の散歩と、こちらは賑わっておりましたが、それも日没までのわずかな時間で、辺りの暗さが増すにつれ、だんだんと人影もなくなってまいりました。
わたくしは、かつての掘りに沿って在ったのでしょうか、柳の木の根元の切り出された岩の上に撮影機材を置き、しばらく様子をながめながら、水門を置く構図を練ります。大川対岸のマンションなどが水門でうまく隠れる位置を探しながら、水門の上部から突き出した照明が灯るのを待ちます。
灯りました。5時50分頃です。上空はいい塩梅の群青色に暮れております。しかし雲がありません。少し前の時間には薄いすじ雲がところどころ走っていたのが、北のほうに残っておるだけで、これではとてもつまらない背景になってしまいます。まぁ仕様がありませんね。今日はあたりをつけるだけで、また来るといたしましょう。
f11まで絞ったときの露出は30秒。アクロスを詰めていますから、この秒数では相反則不軌を考慮する必要はありません。15秒、30秒、1分と段階露光することにしましたが、レリーズしている最中にかぎって川沿いを走ってきた自転車が、水門前を迂回するように通り抜けてゆきます。ありゃ。この間のカットは自転車のランプで白い線が横走りになっていることでしょう。
そうこうして、なんとかよいタイミングのカットを収めることができましたので今回は撤収といたします。宵の始めは通過する自転車が多く撮影に影響することがわかりましたので、次回いかがいたしましょうか。車を使い、もっと遅い時間にやって来るか、いっそのこと日の出前を狙うか、此処へも何度か通うこととなりそうでございます。
再びバスに乗り浅草橋へ戻ります。風がいちだんと冷たくなってまいりましたが、柳橋へ。橋詰にある船宿の鉢植えの梅が花を咲かせていることでしょう。
(メモ:2月24日、山谷掘、午後6時前後。柳橋、6時半から8時ごろ迄。
Acros @EI 25+1/2)
1:46 PM permalink | comments (0) | trackbacks (0)
昨年10月末にgallery bauhausさんを訪れて以来半年を待ちました。
3月になりましたら再び清家冨夫さんの写真を見ることができます。
清家冨夫 作品展「LIGHT ON DUST - Glynde Forge -」
2007年3月5日(月)~ 4月14日(土)
P.G.I. (Photo Gallery International)
東京都港区芝浦4-12-32
(JR田町駅下車 芝浦方面出口より徒歩10分・ゆりかもめ芝浦埠頭駅より徒歩約15分)
月~金11:00 - 19:00、土11:00 - 18:00、日・祝日休館
今からとても楽しみです。
昨年のgallery bauhausさんで拝見したときの、わたくしの拙文はこちら。
11:15 PM permalink | comments (0) | trackbacks (0)
昨夜はまたしつこく柳橋のネガからプリントをしました。以前アップしましたこのカットを再撮影したものですが、アップしているカットは神田川の上流側の橋の南詰から狙っているのですが、再撮は背景を整理するためにその対角線上の反対、すなわち下流側の北詰より撮影しました。フィルムもアクロスからスーパープレストに代えてのリトライ。ところがプリントしてみると未だ構図の詰めが甘いようです。トリミングでいらない箇所を削ると橋のバランスが悪くなってしまい、それは避けたいので、再々撮影するしかありません。
今週の土曜は出勤日にあたっていますので、仕事を終え陽が落ちてからトライしようと企んでおります。カメラ一式、三脚はもちろんのこと、脚立も運んでの大袈裟なロケになります。
ここでのカットはアクロスにフィルムを戻そうかな。人工光源の描写はアクロスのほうが向いているようです。
5:41 PM permalink | comments (0) | trackbacks (0)
先週から忙しく、また体調も芳しくなかったため現像もプリントも全く進まず、ようやっと昨月曜に1点プリントをつくりました。ネガは柳橋のものから。
今月の連休中に撮影しました本郷での6x6からも何点か焼きたいものがあるのですが、もう少し柳橋シリーズを仕上げておきたいと思っておりまして、揺れる川面に客を待ち出航に備える屋形船のカットを選びました。
忘年会客を待つ時間ですので川面は暗く、船宿の灯りがわずかな環境光であり、舟に着けられた提灯の直接的なハイライトをきれいに描かなければなりません。
風がほとんどない日を狙って撮影をしてはいますが、それでもゆったりと揺れる船に対応するためフィルムはスーパープレスト。暗い時間帯を考慮して撮影感度640とし、たっぷりと露光してあげます。そして提灯などの直接的な人工光源をケアするためにフィルム現像を速めに打ち切るという、まさに基本に忠実な撮影現像を実践したネガは、この柳橋シリーズに不可欠なものであります。
プリントは人工光源の中にもトーンを描かせるため00号で基本露光をし、コントラストを整え、シャープ感を添えるため5号での露光を乗せるスプリット・グレード法で処理してゆきます。
先日から柳橋のネガにはイルフォードのFBウォーム印画紙を使っているのですが、D72の標準的な希釈で現像処理しているため茶系に傾かず、かつやわらかなウォームのトーンが得られ満足度は大きいです。
早くアップしろって?
この柳橋シリーズは作品群として制作してゆくことを考えていますので、しばらくアップするつもりはないのですよ!
今夜は印画紙現像液のストックが切れたので、また作り置きしておかないといけません。いつものD72と、初トライとなる現像液も調合してみようかしら? AGFA/ANSCO 110で本郷のネガなんてどうでしょうね?
2:18 PM permalink | comments (0) | trackbacks (0)
「すみません、この辺りに一葉さんが暮らしてた処があるそうですがご存知でしょうか?」
ところどころに射す冬の午後の斜光がコントラストを描く路地で、木造家屋を背景に鉢植えの梅、その花を捕らえようとストロボの発光量バランスを調べていたところ、お散歩デートでしょうか、まだお若いカップルに尋ねられました。声をかけてきた女性の手にはガイドブックが握られていました。
浅学なわたくしは、樋口一葉の文学にしっかりと接したことが御座いませんでしたけれど、昨年或る方から勧められ、ようやく「たけくらべ」を読んでみますと、なんとおもしろい文章でしょう。雅俗折衷の文章のリズムのよさ、boy meets girlのお話しはその年齢にしか持ち得ず誰の心にも在ったであろう葛藤とにがさに溢れた名著であると、さすが5千円札であると、気づかされたのです。
わたくしが撮影をしておりました路地は、東京・本郷の台地を南東から北西に切り裂く谷にあたる菊坂、それに平行する生活路、菊坂下道のことであります。三脚を据えたところから10メートルほど先に、通常外部の者が進入するには憚れるような細い路地への入り口がひっそりと御座いまして、先のカップルに尋ねられました一葉さんの住居跡、といいましょうか、当時の住居は既に建替えられているのですが、井戸だけが静かに居残り、時代を重ねてきた風情ある空間が、その細い路地の中程にぽつりと待っているのです。
わたくしは先日仕事の打合せで、この菊坂を初めて訪れ、風情ある街並みに惚れまして、この日写真機を持っての再訪と相成ったので御座いますが、かの一葉さんの旧宅跡もそのとき発見しておりました。路地への入口に「見学の方は住民の迷惑にならないよう、お静かに願います、云々。」といった内容の表示が為されており、あらこんなところにと恐る恐る入路してみたのです。
調べてみますと一葉さんは貧困のため何度か住まいを移しており、此処現本郷4丁目には父親の死後、18歳からの3年間ほど住んでいたのだそうです。その後吉原隣の下谷竜泉寺町(現台東区竜泉)で雑貨屋を営み、そこも引き払って最後は当時の新興三業地、本郷丸山福山町(現文京区西片1丁目)に堕ちるに至ります。
話しを本郷菊坂に戻しますが、カップルに旧宅跡への入路を教え、被写体に戻り再度梅の花に向き合います。
今日に至っては絶滅したであろう鼻タレ小僧が飛び出してきそうな路地、長屋前に競って並ぶ鉢植え、陽の反射が眩しい石塀の倉がそびえる質屋、着物が似合う文豪が上階の窓をがらりと開け難しい顔を覗かせそうな風情に満ちた旅館などなど、この菊坂の谷と、急な坂を登った台地には、今日には忘れられた時間が、商業ビルやマンションによって周囲から隔てられ、ひっそりと流れているかのようです。
ところで最近のわたくしはそういった街の風情を状況説明的に写真で捕らえることを好まず、なにか、もっと、抽象的なかたちにして、懐かしむのではなく、今日を恨むでもなく、乾いた視線で切り取り、それでも尚、街の美しさを伝えることができぬものかと足掻いているので御座います。
一葉さんの「たけくらべ」には省略による暗示を随所に読むことができます。美登利が見つけ一輪挿しにいれた造花の水仙、信如が手にすることが出来ず降るしきる雨の中おいてゆかれる紅入り友仙のちぎれ。
省略による暗示、省略、暗示と呟きながら、重い写真機材を担いで急な坂を登ったり降りたりしていますと少し汗ばむ温かな午後で御座いました。
わたくしが暗示を手に入れることは未だ先のことになりそうです。
(メモ:2月12日、午後2時から4時ごろ、Taken with the Mamiya C330proS with the 105DS lenz. Presto 400 @EI 200)
7:51 PM permalink | comments (4) | trackbacks (0)
1月のモノクロ写真フォーラム関東地区オフで、撮影し、課題とされたカットを自家プリントしてみました。(参考画像:ミニラボでの同時プリントはこちら)
(click on the image for enlarged)
"段々光画"
Jan '07, @Negishi, Taito-ku, Tokyo.
Taken with the Nikon new FM-2 with the Nikkor 28mm f2.8 lenz.
Ilford XP-2 Super @EI 200.
Oriental VC-FB2, dev in Home brewed D-72(1:2)
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1:59 AM permalink | comments (10) | trackbacks (0)
既に暦は如月に入り神田川の船宿を訪れるものは少ないのでしょう、3日土曜の河岸は閑散として、ただ柳が風に揺れるばかり。
両岸を高いビルに囲まれた川に日が差し込む時間はこの時期たいへん短く、柳橋から一本上流の浅草橋上を走る江戸通りの広い道幅を利用して冬の午後の陽射しは、ほんのわずか橋袂から船宿1軒分東に光を注いでいるのみ。そこでその宿に係留させられた小さな舟のみを撮り、河岸を離れ、町内を散策することにしました。
JRが浅草橋駅から大川を渡る橋の間の高架を抜け北に歩いていますと、風情のある屋根が見えてまいりました。気になって近くに寄ってみますと、なにやら立て看板が道に出ておりまして、その旧態を保持したとても素敵な家がギャラリーになっていることを知りました。ところが表から見るに佇まいがどうしても私的な空間であることを主張しており、一歩入るのにたいへん躊躇させられるのですが、それでも「ご自由におはいりください」とも書かれ、丁度中では展示が行われているようでしたのでお邪魔してみることに致しました。
ごめんくださいと声をかけ、返事はございませんでしたが靴を脱ぎ興味津々でぐるりと頭を回せば、なんと素敵なところでしょう。勝手に奥へ進んで行くと、廊下のシェルフに焼き物が飾られていたり、途中の部屋に作品が置かれてあったりと、ワクワクさせます。木工展として作家の指物が中心の個展でありましたけれど、一番奥の居間には木皿や器、匙などの小物も展示販売されておりました。作品に触れてはいけないと、わたくしはごつい三脚を両の腕で抱えるようにして見ておりましたところ、このギャラリーのオーナーと思わしい女性が、どうぞ遠慮なく荷物を置いてご覧くださいとお声をかけてくださいました。とはいえ重いスチールの、そしてパン棒が張り出した汚い三脚を此処のきれいな床にごつんと置くのも憚れましたので、そのままの恰好でふらふらとしていますと、先の女性がお茶を用意してくださったのに恐縮し「ふと通りがかったところ、看板が目に入り、ここにこのようなギャラリーがあるとは存じませんでしたので、勝手に上がらせていただきました」と説明すれば「普段は閉めていることもありますからお気づきになりにくいかも知れません」と。また「こちらはレンタルもされておりますか?」と不躾にも質問したところ、積極的にはやっておりませんと、ただし時期的なものもございますが、こちらで作品を拝見させていただいた上でのご相談と相成りますとのこと。
可能性はなくはないようです。
柳橋の写真を根気良く撮り溜めることができれば、このようなところで作品展をしてみるのも乙なものではないだろうかと想いを馳せながら、薄暗く電灯のあかい光が優しい廊下を抜けて辞してまいりました。
(メモ:2月3日、午後4時ごろ、Super Presto 1600 @EI 640)
3:38 AM permalink | comments (2) | trackbacks (0)