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September 17, 2006

  100年前の写真技法

昨日、三島浩さんの個展を紹介するエントリーをアップしたところ、プラチナ・プリントとはいかなるものか、というご質問をいただきましたので、僕が知っている限りでお伝えしようと本日のエントリーを用意しました。プラチナ・プリントに関して僕自身その制作を経験したことがありませんので、かつて興味を持ったときに調べたことをベースに書いてゆきたいと思います。

アナログ写真の作成プロセスは銀が持つ感光性を利用して(感光すると黒くなる性質)画像を作成しておりまして、すなわちこれを銀塩と呼んでいるわけです。ギャラリーなどで目にする、耳にするゼラチン・シルバー・プリントといったら、特別な響きから、なにやら高尚なもののように思えますが、普通の銀塩写真のことです(銀粒子をゼラチンで固めて支持体=フィルムとか紙とかに塗布しているから)。ところが写真がその銀を利用することで安定的継続発展を為す前段階では様々なアプローチが為されていたようで、それらの処理、印画法のことを今日ではオルタナティブ・プロセス(もうひとつの処理法)、または単純に古典技法と呼んでいます。

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このオルタナティブ・プロセスではサイアノ・タイプ(いわゆる青写真)とか、アルブミン(鶏卵紙:卵の白味を結合剤として使ったもの)とか、いろいろな方法が現在において復活しているようです。
そしてプラチナ・プリントもそのひとつだというわけで、その特徴としては黒の締りがよく、柔らかで豊かな階調が得られる。またプラチナはたいへん安定した金属なのでプリントの画像耐久性にも優れているとのこと。現実的にはプラチナにパラジウム(プラチナと同じ周期に属する原子量が約半分の元素)を混合させて使用し、それをプラチナ・パラジウム・プリントと呼んでいます。

原理としては銀塩の感光性と同様ですが、その銀が貴金属であるプラチナ(またはパラジウム)に置き換わったプリント法です、ってこれだけじゃなんのことかしらん? 
もちろん純プラチナ・プリントは純黒な白黒プリントです。パラジウムを使うと赤褐色になってくる。セピア・トーンのもっと赤い感じといったら解るでしょうか。で、そのプラチナとパラジウムの配合の割合によって色味をコントロールさせているようです。他にはコスト面と作業的安定度の面から混合方式が(その道では)一般的になっているそうです。

印画紙は基本的に乳剤(キットが売られている。)を好きな紙に塗布して作ります。もちろん向き不向きもありますが、和紙に塗布したりもできちゃうわけですよね。(銀塩でも富士からアート・エマルジョンっていう刷毛で塗るタイプの乳剤が販売されています。)ただ感度が低いので密着焼きしかできない。銀塩でもベタ焼きって作りますでしょ。ネガと印画紙をくっつけてプリントする、あのやり方です。で密着させて太陽光や紫外線で焼いてプリント。専用のプリンターが販売されていて、紫外線ですから日サロのマシンの小さいヴァージョンを想像してください(笑)
そうそう、密着焼きですからネガ・サイズ=プリント・サイズとなります。大きなプリントを作るとき、昨日のエントリーで紹介しました三島さんの場合は元ネガから、それを反転させたポジ・フィルムをまず作り(インターポジとなる)、それを引伸ばし機にかけ、大きなサイズのネガフィルムに焼きつけます。それを現像~定着を施して、その大きなサイズのネガをプラチナ・プリント用とするのだそうです。
この工程では高精度なデジタル・スキャンを用いてプリント用ネガを作っている方もいるようです。

プリントでは強いコントラストが得られにくいのでネガのほうを硬調に作成しておく必要があるようです。そのためにパイロ(染色)現像を行ったりといろいろ工夫されているようですね。

さてさて、そんな面倒な古典的プリントをなぜ好んで行う方がいらっしゃるのか。やはり独特なトーンの柔らかさが得られるからなのだと思います。僕は三島さんのプリントはもちろん、イモジン・カニンハム(拙文ですがコチラをご参照ください。彼女の場合、古典技法ではなくリアルタイムな技術だった!)という方のプリントも見ていますが、幻想的ともいえるシーンにとてもマッチし、それはそれはとても美しいです。
ところが、この技法で精力的に作品制作をされている方も増えているようですが、それでもなかなかお目にかかれません。もし個展や、その他美術館の展示などの情報を得ましたら、こちらでも紹介するよう努めたいと思っております。

ところで僕たちが行っているアナログ銀塩写真も、もう既にオルタナティブ・プロセスなのかしらね?

posted by mniijima : Sep 17, 2006

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comments

詳しい解説ありがとうございます!
とても手間やコストがかかりそうなプリント方法ですね。
でも、それをするだけの価値がある手法なのでしょうね。
次に機会があったらこの目で見てみなくては。

確かに、銀塩プリントも古典技法となりつつあるかもですね…。

by ちぇる : September 17, 2006 11:53 PM

ちぇるさん、冗長な拙文にお付き合いさせてしまったようで恐縮です。確かに手間とコストがかかる技法ですね。単にプロセス的な興味だけではなく、本当にそれで描かれたことによって作品の魅力アップするようなプリントは観る価値ありだと思いますよ。

銀塩が古典技法だとしたら、、、プラチナの例もあることですし、あと100年くらいは楽しめるのではないかと、ポジティブに考えていま~す!

by M.Niijima : September 18, 2006 12:11 AM

こんにちは、通りがかりの大学生、ゆかと申します。
この度卒業研究の課題として銀塩写真における表現法について研究を進めたいと思い、印画法について調べているところこのページへ辿り着きました。
いきなりで申し訳ないのですが、質問があります。
私は富士のアート・エマルジョンを利用して紙以外のものにプリントを行い表現の違いや幅を広げることについて調べていこうと思っているのですが、文中に
>>ただ感度が低いので密着焼きしかできない。
と、記載されています。
これはアート・エマルジョンでは引き延ばすことができないのでしょうか?
勉強不足で質問という形になってしまいましたが、ぜひ教えて頂けると有り難いです。
宜しくお願いいたします。

by ゆか : February 20, 2011 9:15 PM

ゆかさん、
こんばんは。卒業研究で銀塩写真を題材にされているとは、このデジタルの時代に興味深いテーマを追っていらっしゃるのですね。

拙文を読み返してみましたが、なるほど誤解を招く表現だったかもしれません。失礼をいたしました。

> ただ感度が低いので密着焼きしかできない。

と記しているのは、あくまでもプラチナ印画技法についてのことを述べております。

アートエマルジョンでは引き伸ばしプリントをできるはずです。

フジのサイトから、他の通常銀塩印画紙のようにデータシートがすぐにDLできないのですが、手元の資料(モノクロ写真塾 日本カメラ社刊)によりますと、
アートエマルジョンの
『1:プリント時の露光量は、支持体と乳剤の厚みによって感度が変わるため、本番と同様につくったテストピースで試し焼きをする。
2:試し焼き用のテストピースは、フジブロWP・FM3号で代用できる。この場合の露光指数は「フジブロ」を10とすれば、「アートエマルジョン」の塗布剤は12〜15となる。』

とありました。フジブロWPと感度が近いということは引き伸ばしプリントには充分な感度を有していると判断できますね。

因にフジのサイトから、フジブロWPのデータシートはDLできるようになっています(ISOレンジとISO感度が解ります。3号紙の場合、ISOレンジ=R80、ISO感度=P400、とあります。値に関しては勉強してくださいね。)

http://tinyurl.com/4ayeu9w
(フジブロWPのデータシート=pdfファイルへの直リンクです)

が、アートエマルジョンのデータシートはリンクが設けられていないようです。

http://tinyurl.com/4k366o5
(印画紙などのページへのリンク)

ただし、以下のページからメール・フォームにて問い合わせますと(アートエマルジョンのデータシート希望などを記して)、先方に控えがあるでしょうから、そのコピーを郵送してもらえる場合もあります(私はミニコピーという複写専用の白黒フィルムのデータシートをそのようにして頂いたことがあります。)ので、問い合わせてみるとよいかもしれません。

http://tinyurl.com/6a74zrs
(フジの黒白フィルム・黒白印画紙・黒白薬品に関するお問い合わせ先)

あくまでデータシートに関してのことです。使用法等はアートエマルジョンのパッケージに同梱されているか、箱に印刷されているのではと思いますので、そちらをよく読んでおくことがよいでしょう。

また不明な点がございましたら、質問など気軽に寄せてくださいね。
では、よい研究ができますように、頑張ってください。

by M.Niijima : February 21, 2011 12:02 AM

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