トロンボーン奏者、カーティス・フラーが1959年にSAVOYレーベルよりリリースした「BLUES-ETTE」は、往時におけるジャズ喫茶の定番であったと諸先輩方から教えていただきました。
じんた堂さんのエントリー「SAVOY」で紹介されている盤は90年代に国内の(当時)日本コロムビアから発売されたリイシュー盤。これはなかなかよい処理を経て世に出てきた盤であることを他所から情報を得たことで、俄然興味を覚えたのでした。そしてモノ盤、ステレオ盤を判別する品番情報もじんた堂さんよりいただき、まずはモノ盤でも買ってみようとオークションに入札したのでした。

continue reading "ソナタにソナチネ、ブルースにブルーゼット、ということかしら?"
(三月五日のこと、)
昨晩の雨がすっかりあがり、青々とした空が心地よく身を包む朝、所用あって、久しぶりに人形町へ。啓蟄の虫のごとく地下鉄駅から地上へと這い出てまいりました。
大通りからひとつ入ったまだ仕度中の商店が並ぶ道の人影はまばらでしたが、着物に前掛けをした寿司屋の女将さんは雨も疾うに乾いた店先に水を打っておりました。パーマネント屋の鉢には絵日傘というのでしょうか、紅白斑の椿が凛として咲き、菓子屋からはニッキ(ここではシナモンと呼ばないほうが似合っていると思います)の香りがたち、春めいた陽気に心までほかほかとしてまいります。
しばらくしてこんどは、このあたりは寺町ではございませんが、ふうっと鼻を包んだのは線香からたったほのかなにおい。何処かの御宅の仏壇で燻されているのでしょう。商店街とはいえ、店と家が同じ屋根の下にあるといったことは以前では普通のことであり、その普通の営みが此処ではまだ息づいているようです。
用事はすぐに終わり、時間があったので大川端へ寄ってみることにしました。
箱崎の高速道路の下から堤防を越えますと、たくさんの保育園児が明るい日差しの下で遊んでおりました。その陽は強く、少し歩いてきただけで汗ばむようでしたから、上着は小脇に抱えることにいたしました。昨晩の雨に川は洗われたのでしょうか、この日はあまりドブ臭くなく、風はほんのりと潮のにおいを運びわが身を摩るようにして過ぎてゆきます。
清洲橋。
南にそびえる旧石川島の高層マンション群、そして北に見えるまだ半分の高さなのに視界に迫る墨東峻絶塔(ああ、世間では東京スカイツリーと申すそうな)、ここから石川島へはおよそ1.5キロ、押上まで3キロメートルほどしか離れておりませんが、靄に覆われコントラストが著しく低い遠景。
これはもう春の様子でございます。
翌日からは、また天気が崩れるとのこと。そのせっかくの一日の一時をこうして過ごせましたこと、ありがたいことでした。
映画監督であります篠田正浩氏が著した「河原者ノススメ(幻戯書房 2009)」は豊富な資料を背景に日本芸能史をまとめあげた興味深い書籍でした。
篠田はいまにも血をつなげる芸能の系譜を、大陸や半島、さらにはアジア全域のアニミズムの影響を踏まえたうえで伎楽、散楽の輸入を起点とし、田楽、猿楽、そして能狂言への発展、またアルキ巫女や白拍子、琵琶法師の語る平曲などから、後世の説教、浄瑠璃、歌舞伎への発展などを、ただ時系列に並べるのではなく、その流れのなかで絶えず疎んじられた人々の姿がダイナミックに芸能を動かしていったことを再確認しております。
また(語り物などの)物語からは斯様な人々の悲哀や愁訴が滲みでていることも、この国の芸能史を確認してゆく上での要点であると気づかされます。
この書を読むにあたり、参考にしたいもの、
●日本の音-世界のなかの日本音楽 / 小泉文夫(平凡社ライブラリー)
音階構造など理論面からの考察などは玄人向きかもしれませんが、日本の音、音楽、芸能の全体像をまず浚うには絶好の書。
●日本の歴史をよみなおす (全) / 網野善彦(ちくま学芸文庫)
網野氏のなかでは「中世の非人と遊女(講談社学術文庫)」が直接的資料になりそうですが、まず網野史観のダイジェストとして読んでおきたいです。
●女性芸能の源流-傀儡子・曲舞・白拍子 / 脇田晴子(角川選書)
「河原者ノススメ」でも脇田氏の諸作はたくさん引用されておりました。
●日本藝能史六講 / 折口信夫(講談社学術文庫)
折口の「翁の発生」は篠田の書につながってゆきます。
●歌舞伎以前 / 林屋辰三郎(岩波新書184・絶版)
生憎絶版なのですが本当は一番のお勧め。古書相場では1,000円くらい。
ところで、「河原者ノススメ」のなかで岩佐又兵衛の名がでてきたことにはいたく驚かされました。
continue reading "コノコロミヤコデハヤツタモノ"
柔らかな陽が射し込む部屋。ターンテーブルのうえで回るLPレコード。
モーツァルト、変ホ長調交響曲、第39番、その第二楽章。
老人は身動きせず静かに聴いておりましたが、途中、傍らにいるのでしょうがフレームアウトしてその姿は見えない彼の息子へそっと話しかけます。
「次がきれいなところだ、、、、、聴いて。」
木管の吐息のあと、弦によるメロディが高鳴ります。
そのフレーズを聴いた老人の顔から、これ以上にない優しい微笑みがこぼれました。
そして、
「きれいだろ。」
と。
continue reading "変ホ長調交響曲第二楽章"
雑感:We Are The World 25 for Haiti
映画「This Is It」からブレイクしたOrianthiに続いて、We Are The World 25 for HaitiからはNicole Scherzingerではないかしらん?
そう、全員コーラスのなかで白いタンクトップを着ている別嬪さんです。
Orianthiより上手いギタリストは沢山いるでしょうし、(失礼ながら)容姿だって、、、
それでもステージ上でのOrianthiには「華」がありましたね。そのプレイ・スタイルに魅せられたのはわたしひとりではなかったようです。
Nicoleは、The Pussycat Dollsというヴォーカル・ダンス・グループ、まぁ所謂、アイドル・グループのリード・ヴォーカリストとのこと(PCDと略すそうですから、以降はそれに倣います)。
アイドルとはいえリードを務めているからには米国ではきちんと歌えることが最低条件。そして詩曲も書くそうですから将来的な幅を期待できそうです。PCDを(日本風に言うと)卒業して、もっと広い層へ訴える楽曲でソロ・デビューしたらブレイクしそうだと思いませんか?
このオフィシャル・ビデオのサムネイル(トップ)画像、中央の女性です。
continue reading "華 -It means the enchanted, not the flowers-"
(動画を再生しただけでは募金できませんので、お気軽に再生してください。)
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慶長の京四条河原には数多の芝居小屋が跋扈していたようです。
いつも特別展だけに出掛けてひしめく人波に這々の体となって帰ってくることになる国立博物館ですが、平常展はすこぶる空いていて、ときには六曲一双の屏風も吾一人のものとなる贅沢。
洛中洛外図・舟木本を目当てに上野の山へ行ってまいりました。(左画像は東京国立博物館・本館内の休憩処。本文内容とは関係ございません)
保存のため公開は年にひと月と限られている作品ですが、ひっそりとした保管庫で眠っているより人前に出て、人々の感嘆などとともに過ごしたほうが似合いだろうと思ったほど賑やかさ。洛中洛外図はいくつか見てきましたが、こんなに享楽的なモチーフをたくさん盛り込んだものは初めてかもしれないという印象を得ました。
東寺の五重塔からの視点で描かれているそうですが、右隻に豊臣家の方広寺大仏殿を置き、左隻に徳川の二条城があり、ともに目を惹く大きさなのですが、洛中洛外図はなんといっても町衆の風俗を見ていくのがおもしろいです。